2021年12月15日更新
カリフォルニアワイン協会(California Wine Institute、略称CWI)は、2021年のワイン用ブドウの収穫レポートを、以下のとおり発表しました。
カリフォルニアのワインメーカーたちは2021年が近年で最上のヴィンテージとなると見込んでいます。穏やかで安定した生育期の後に迎えた順調な収穫を生産者たちは心から楽しむことができました。 ノース・コーストを含む多くの産地では通常よりも1週間から数週間早い収穫開始となりました。一方でセントラル・コーストは冷涼で、通常よりも遅く収穫が始まりました。
カリフォルニアではスパークリングワイン用ブドウが最も早く収穫を迎えるのが一般的ですが、今年はスティル・ワイン用の白ブドウ品種、ソーヴィニヨン・ブランなどの方が早く成熟した場合もありました。また、通常なら同時期に完熟することのない品種が同時に成熟を迎えたケースもあり、産地によっては複数品種を同時に収穫する必要に迫られました。
現在も続いている干ばつは栽培家たちにとって大きな脅威であり、収量の減少につながりましたが、ワイン生産者たちは口を揃えてブドウの傑出した品質と高い凝縮感を報告しています。 カリフォルニアは米国全体のワイン生産量のおよそ80%を占め、世界で4番目に大きなワイン産地です。カリフォルニアワインの80%以上がサステイナブル認証を受けたワイナリーで生産されたものであり、カリフォルニアにある637,000エーカーのブドウ畑のうち半分以上がカリフォルニア州の指定するサステイナビリティ・プログラム(カリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング・アライアンス認証、フィッシュ・フレンドリー・ファーミング、ローダイ・ルール、ナパ・グリーン、SIP認証)の認証を受けています。カリフォルニア州の栽培家が採用しているサステイナブルな取り組みの多くは未来を担う世代のために土地を守るだけでなく、収穫および生育期の運営を円滑にし、ワインの品質を高める手助けにもなっています。
カリフォルニア州各地のワインメーカーのコメント
「今年の天候は生育期終盤の気温が穏やかで、この上なく良好でした」と語るのはナパ・ヴァレーのオークヴィルにあるグロス・ヴィンヤーズの栽培責任者、テッド・ヘンリーです。「ブドウを収穫するまでにほんの少し、味わいを成熟させる時間が持てましたから」。房や粒が小ぶりだったので収量はやや低めとなりましたが、それ以外の点で目立った問題は見られませんでした。「2021はナパ・ヴァレーのトップ・ヴィンテージとなると思います」ヘンリーはさらにこう続けます。「赤ワイン用品種は色も濃く抽出も十分でバランス感とフレッシュさがとても良いのです。メルロとカベルネ・ソーヴィニヨンは特に傑出していますが、白も生き生きとしてフレッシュで、風味に満ち溢れています」。
ソノマ・カウンティ、ヒールズバーグにあるロドニー・ストロング・ヴィンヤーズの収穫は例年よりも1週間早く、8月8日に始まりました。生育期間には熱波も急な冷え込みも見られませんでした。「まともでなかったことといえば、あらゆる品種がいっぺんに成熟したことです」。醸造責任者であるジャスティン・サイデンフェルドは述べました。「同じ日にソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ、メルロ、グルナッシュ・ブラン、そしてジンファンデルを収穫したなどということもあります。尋常ではないことです」。収量は全体で14%低下しましたが、シャルドネとピノ・ノワールは例年通りでした。「品質とワインの色、タンニンの発達具合はこれまで見てきた中で最高レベルに入ります」とサイデンフェルドは述べ、「うちのボルドースタイルの赤は素晴らしいです。抜群のヴィンテージになるのは間違いありません」と付け加えました。
デリカート・ファミリー・ワインズの製造部門副部長兼チーフ・ワインメーカーであるコーリー・ベックも収量の減少について触れています。「ナパ・カウンティとソノマ・カウンティ全体で干ばつに対峙する必要があり、房当たりの重量は減ってしまいました。良いニュースとしては、赤ワイン用品種に関しては素晴らしい味わいと色調にこの上ない凝縮感がもたらされたことです。ローダイとセントラル・コーストの畑ではどちらも穏やかで雨の少ない夏の影響が現れて、ブドウの骨格が軽めになりました」。ベックがとりわけ心を躍らせているのは活き活きとした風味のシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンです。「発酵槽内のワインはどれも心地よく成熟した香りがして、凝縮感も高いです。通常よりも酸はやや高めですが、おかげでワインは非常に鮮やかです。果実の凝縮感とクリーンさこそ、2021年の卓越した収穫を象徴する2本柱といえるでしょう」。
リヴァモア・ヴァレーではウェンテ・ヴィンヤーズの収穫が通常より早く8月第2週あたりに始まりました。熱波にもほとんど見舞われなかったリヴァモア・ヴァレーの生育環境は理想的だったと栽培責任者のニキ・ウェンテは言います。開花期の強風で赤ワイン用品種の一部で花ぶるいが起きましたが、白ワイン用品種には影響はありませんでした。赤ワイン用品種の収量は15%減少したものの、結果として品質は上がりました。 「果粒がとても小さいので風味の凝縮感が強いです」ウェンテによれば特にその傾向はカベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー系品種に顕著だということです。また、白ワイン用品種についても安定したヴィンテージとなりました。「美しく、花のようにかぐわしいワインになるでしょう」。
J.ロアー・ヴィンヤーズ&ワインズでは今年、パソ・ロブレスの畑では生育期前に十分な降雨がありました。しかし、そのほとんどが一度の嵐でもたらされたものだったため、水の大部分は土壌に吸収されることなく流失してしまったそうです。「どれだけ灌漑を施しても、ブドウには雨水が一番なのです」とワイン醸造責任者、スティーブ・ペックは言います。「総降雨量が低かったせいで樹冠もブドウ自体も今年はいつもより小さめです」。 それでも、収量は例年レベルを維持することができ、ブドウは骨格がしっかりとした、通常よりタンニンが多いものとなったと彼は付け加えました。「力強い口当たりが好きな人にはたまらないと思います。2021ヴィンテージはきっと楽しんでもらえるものになるはずです」。
ホプランドに拠点を置くフェッツァー・ヴィンヤーズはカリフォルニア全土でブドウを栽培していますが、過去の平均よりも数週間早く収穫を始めました。降雨量が非常に少なく、夏が温暖だったため房も果粒も小さくなりました。フェッツァーの醸造およびワイナリー・オペレーション部門副部長、ジョン・ケーンは、2020ヴィンテージ収穫後という早い時期から、異常に寒く雨の少ない天候に見舞われたブドウが防御モードに入ってしまったことで2021ヴィンテージへの影響が始まったと考えています。「3月に気温が上昇し始めるとすぐ萌芽が始まりましたが、冬に通常の降雨のあった年ほどの数ではありませんでした。その後非常に気温の高い春と夏が訪れたことでブドウにはさらにストレスがかかってしまいました」。
利用可能な水の量が限られ、さらに生育期の気温が高かったことで、栽培家たちは精密な灌漑と樹冠管理を求められました。ただ、果粒が小さく収量が低かったため、ワインには強い凝縮感と活力が与えられることとなりました。「モントレーのソーヴィニヨン・ブランはキリリと鮮やかですし、カベルネ・ソーヴィニヨンはカリフォルニアのどこの畑のものでも青臭さは全くなく、品種特性を存分に発揮しています」。
フレズノ・カウンティ、パーリアーにあるオニール・ヴィントナーズ & ディスティラーズの醸造およびブドウ栽培部門副部長、マーティ・スペートによれば、生育期には過度な熱波も山火事による煙害もなかったとのことです。それだけでなく、全体的にブドウの品質は素晴らしく、中でもプティ・シラーが秀逸とのこと。「ブドウは州内各地から買い付けていますが、今年一貫して感じられるのは果実が見た目も味わいも最高であるということです」。彼は更にこう続けます。「果実の特徴が強く凝縮されていて、タンニンの質も良好で、各成分と酸とのバランスも取れています。2021は過去10年で最高のヴィンテージのひとつであると自信を持って言えます」。
サンタバーバラで栽培家が経験したのは穏やかな生育期で、収穫は過去の平均と同じか、やや遅い程度でした。「成熟期の気候はサンタバーバラ・カウンティに求めうる中で最も理想的と言えるほどでした」。ロンポックにあるディアバーグ・ヴィンヤードのワインメーカー、タイラー・トーマスはこう述べています。「朝は涼しく十分な霧も出て、熱波に見舞われることもほとんどありませんでした」。生育期の初めには樹冠の勢いに若干のばらつきが見られたものの、それ以外は生育は順調で、収量も過去の平均と同等か若干下回る程度だったといいます。ワインの味わいにはこの上ない深みがありますが、アルコール度数は低く、酸は高く維持されています。「この上ない深みと豊潤さを持ったワインに、さらにエネルギーを与えられるということに胸を躍らせています」とトーマス。「中でもカベルネ・ソーヴィニヨンとピノ・ノワールのワインにはそれが顕著に見られます」。
地域別の収穫レポート
アマドア・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:3,644エーカー
主力品種:ジンファンデル、バルベーラ
アマドア・カウンティの生産者たちは、今年のブドウの品質は申し分ないものの、収量は通常よりも減少したと報告しています。冬期は降雨が少なかったものの、萌芽と開花は通常通りで、そのまま暑い夏を迎えました。収穫の開始は特に早かったわけではありませんが、収穫の開始と共にあらゆる品種の成熟が一気に進みました。これまでのように8月下旬から10月下旬、ときには11月上旬にかかるのではなく、9月下旬までに全ての収穫が終わったのは、アマドア・カウンティ史上最も早い記録と言えるでしょう。干ばつの影響でブドウの房も果粒も小さく、冬期の降雨の少なさは生育期の灌漑でも補うことはできませんでした。そのため収量は劇的に減少、過去平均の50%から60%程度まで落ち込みました。ただ、運び込まれてくるブドウは美しく完熟し、凝縮感が強く、色も濃く、偉大な複雑さとタンニンの骨格を兼ね備えたものでした。酸の量は中程度、pHはやや低めだったものの総酸量は収量の低さを反映し高めとなりました。ワインメーカーたちはジンファンデルやバルベーラ、シラー、グルナッシュ、テンプラニーリョなどアマドア・カウンティを象徴する赤ワイン用品種の素晴らしい品質に目を見張っています。
エル・ドラド・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:2,219エーカー
主力品種:ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー
2021年、エル・ドラド・カウンティの生育期は栽培家たちがその質に興奮を隠せないほど、素晴らしいスタートを切りました。この産地では春の遅霜は見られず、比較的気温の高い天候にもかかわらず萌芽と開花は通常通りの時期に起こりました。夏は比較的暑く、夜まで気温が高めに推移することもあったため、栽培家たちは7月から8月頃には収穫が早まるだろうと考えていました。しかし8月半ばに起きた山火事、カルドール・ファイアによってスケジュールと優先順位の再考を余儀なくされました。一部地域では避難が必要となり、労働力の問題、さらには数週間にわたる煙害など、山火事による様々な試練がもたらされました。避難勧告のタイミングによっては灌漑を止めざるを得ない状況もありました。煙の影響を受けた一部のブドウが収穫されず樹上に残されたため、収量は全体で15%ほど低下しました。
山火事の前には、栽培家たちはブドウの品質が優れ、美しい色、深い味わいとこの上ないバランスを備えていると報告していました。現時点で煙害の程度を推し量るには早すぎますが、白ワイン用品種の味わいは非常に良好ですし、ムールヴェドルは最適なpHと酸度であることがわかっています。栽培家たちは数か月後に落ち着いてから、ワインの質を再度確認する予定です。
レイク・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:10,009エーカー
主力品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブラン
レイク・カウンティのワイナリーは2021ヴィンテージが驚異的な出来だと報告しています。この地域は標高が高いものの、春の生育環境で萌芽は通常より数日から1週間早く起こりました。開花期の風と小雨のため、通常よりも収量が落ちた生産者もいました。この産地内ほぼ全域で房の重量はかなり軽くなりましたが、そのおかげで成熟は順調に進み、収穫も早まりました。レイク・カウンティでは通常、白ワイン用品種と赤ワイン用品種の収穫の間に若干の猶予がありますが、今年は赤ワイン用品種の収穫は白ワイン用品種の直後、間髪いれずに行われ、カウンティ全体の収穫は10月初旬までにほぼ完了していました。
リヴァモア・ヴァレー
ワイン用ブドウ総栽培面積:4,000エーカー
主力品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロ
リヴァモア・ヴァレーの栽培家たちは2021ヴィンテージの品質に興奮を隠せません。赤ワイン用品種も白ワイン用品種も美しく成熟しました。熱波に見舞われることもほとんどなかった安定した生育期は、成長度日および積算温度という観点からすると2019年の状況に近いと考えられています。寒く風が強かったために開花期間は長くなり、赤ワイン用品種では花ぶるいも見られました。収穫は通常より早まりましたが、穏やかな天候のおかげでゆっくりと進行しました。ただし、10月17日までに収穫を終えていなかった畑では激しい降雨の影響で収穫に苦慮することとなりました。干ばつのため地域全体で赤ワイン用品種の果粒は小さくなりました。収量はほどほど、白ワイン用品種は平均的からやや多い程度、赤ワイン用品種は想定の85%程度に落ち着きました。今年はカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロが特に素晴らしく、果実味が乗り、素晴らしい酸と美しい骨格を誇っています。
ローダイ
ワイン用ブドウ総栽培面積:100,000エーカー
主力品種:カベルネ、シャルドネ、ジンファンデル
2021年、ローダイの生育期は干ばつの影響が色濃く見られ、収量を圧迫しました。この影響は2020年11月の時点から始まっていました。畑によっては季節外れの凍害のために生育が不均一になり、中には立ち枯れを起こすブドウも見られました。ただ、ブドウの状態が明らかになったのは春、成長が止まったり、遅れたりしていることが目に見えてわかるようになってからのことで、不均一な生育や収量の低下につながりました。収穫は8月初旬に始まりましたが、9月初頭までにすべての主要品種の成熟が一気に進み、栽培家も醸造家も高い糖度の扱いに苦労することとなりました。
干ばつはローダイの農家に引き続き影響をもたらしています。ほとんどのブドウ畑は灌漑用水を入手できるものの、冬期の降雨による恩恵を享受することができませんでした。干ばつのため、特に樹齢の高い畑では収量の低下が顕著で、中には枯死してしまうブドウも見られました。ただ、栽培家たちは主要品種については産地全体で平均的からやや平均を下回る収量に留まったと報告しています。また、労働者不足はビジネスのあらゆる側面に大きな影を落としています。今年、醸造家たちは機械収穫機のオペレーターやトラクター操者の確保に苦労しましたが、労働者不足はさらにトラック輸送やワイナリー運営にも大きな試練を与えました。しかしながら産地全体の主要品種は順調で、品質は素晴らしいものとなりました。カベルネ・ソーヴィニヨンやプティ・シラーなどの赤ワイン用品種の成熟は通常より早く、自然の酸もしっかりと維持できています。
メンドシーノ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:17,379エーカー
主力品種:シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール
メンドシーノ・カウンティでは非常に良好な品質と収量の低さが2021ヴィンテージの特徴だと報告しています。降雨の少ない冬に続いて春も乾燥しており、気温が低い状態も続いたため、例年より霜の観測された日が多くありました。萌芽は通常よりも早かったものの開花と結実はほとんどの品種において不均一で、収量の低下につながりました。収穫は品種や地域によって例年より2週間から3週間早く始まりました。労働者不足はどのワイナリーでも深刻で、2021年の収穫はそれまでの半分の労働力しか確保できず、機械化に頼らざるを得ない場面も多くありました。
今年は干ばつが収量に大きな影響を与え、多くの品種、特にカベルネ・ソーヴィニヨンとソーヴィニヨン・ブランで収量が大きく低下しました。ただ、この収量低下は品質の向上につながっています。白ワイン用品種の糖の蓄積は良好で、自然の酸もしっかりと維持されています。赤ワイン用品種では温暖なヴィンテージに比べ糖度が平均よりも低く、自然の酸は高く、タンニンの骨格もしっかりとしています。成熟の早いシャルドネやピノ・ノワールなどの品種は多くのサブ・アペレーションでこの上ないポテンシャルを見せている一方、シラーやプティ・シラー、ジンファンデルやカベルネ・ソーヴィニヨンなどはカウンティ内陸部で良い出来です。
モントレー・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:45,915エーカー
主力品種:シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン
2021年のモントレー・カウンティの収量は、寒く長い生育期の影響で減少しました。結実は平均的か平均をやや上回る程度で、畑の位置やマイクロクライメットによって異なりました。産地全体の降雨量の約3分の2が72時間の間に降ったこともあり、ブドウの樹にはある程度のストレスがかかったと考えられます。栽培家たちはストレスや水分量を計測し、ドリップ式灌漑で調整を行いました。カリフォルニア州の他の産地が焼けつくような暑さに喘いでいる一方、モントレー・カウンティは海からの影響を強く受けており、それは特に夏に顕著でした。冷涼な日が続き夏の度日が低くなったために酸が高く糖が低くなりがちで、そのバランスをとるために時間を必要としました。長い夏を経て9月に海からの冷却効果が薄れると、陽の光と暑さがもたらされ、酸と糖はようやくあるべき姿に落ち着くことができました。
2021年の収穫がカウンティ全体で始まったのは9月半ばのことでしたが、通常なら同じ時期に成熟しないような品種が同時に収穫を必要とする状態でした。醸造家たちはタンク繰りや人手確保に苦労しながらも状況の把握に努め、結果としては多くのワイナリーが当初の想定を上回る量のブドウを仕込むことになりました。醸造家たちは口を揃え、pHの低い赤ワイン用品種の良質さを報告しています。今季はハングタイムを長く取れたため、フェノリックも十分に発達しました。
ナパ・ヴァレー
ワイン用ブドウ総栽培面積:45,511エーカー
主力品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロ
ナパ・ヴァレーの醸造家たちは今年のヴィンテージの品質に大きな興奮を隠せません。全体として、降雨量の少なさやナパ・ヴァレー全体の水位の低さという課題はあったものの、生育期は穏やかで大きな問題は起こりませんでした。収穫は通常より早く始まることがほとんどでした。干ばつの影響で果粒は例年に比べると非常に小さく、収量も地域によっては2019年比で20%から30%低下しました。また、労働者不足の問題は産地全体で見られ、十分な人手が得られない状態の中、最善を尽くすしかありませんでした。ブドウの品質は全体的に素晴らしく、濃く、完熟した果粒が得られています。
パソ・ロブレス
ワイン用ブドウ総栽培面積:40,000エーカー
主力品種::カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラー
パソ・ロブレスの2021年は春の霜害もほとんどなく、夏は温かく、醸造家にも栽培家にも優しいヴィンテージとなりました。他の多くの産地同様、パソ・ロブレスでも降雨量は不足し、灌漑に依存しているブドウ畑での水やりは早くから始まりました。開花から結実の間に吹いた強風のためバラけた房や花ぶるいが見られ、収量低下につながりました。萌芽は成熟の早い品種で3月下旬から、晩熟品種では4月中旬から下旬に始まりました。西側の丘陵部に位置するブドウ畑の一部では生育の早い時期に急激な熱波に襲われました。もともと収量が低く灌漑設備がほとんどない地域ということもあり、多くのブドウ畑で収穫を大急ぎで行う必要がありました。収穫は早く終わるだろうと予測していた栽培家もいまばらつきしたが、実際には気温の高い日と低い日のが大きく、成熟速度が落ちました。一方、パソ・ロブレスの東側では成熟がゆっくりと進み、バランスよく仕上がりました。なお、2021ヴィンテージに干ばつが与えた影響は甚大でした。房の平均重量が30%から40%減少し、樹冠が熱に晒されたことで果実の成熟にも悪影響が出ました。郡全体の収量もほとんどの品種で30%から40%低下し、特にカベルネ・ソーヴィニヨンで顕著でした。ただ、果粒が小さいことで果実の凝縮感は高まり、品質も非常に良好です。今年はカベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、プティ・シラーにとって苦しい年となりましたが、近年植えられたカベルネ・フランは特に好調でした。
サン・ディエゴ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:682エーカー
主力品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー
2021年のサン・ディエゴ・カウンティの収量は通常よりもやや少ないものの、偉大な品質となるポテンシャルを見せています。生育期の天候は例年よりも雨が少なく、灌漑の開始が早まりましたが、おかげでウドンコ病のリスクは減少しました。強風や熱波もほとんどなく、萌芽と開花は通常通りでした。収穫の開始は早くも遅くもなく、房を落とす必要も少なく、収量も確保することができました。ブドウは色づきも良くpHは低いまま糖度が十分に上がったため、偉大な品質となることが期待されています。白ワイン用品種の成熟が早かった一方で赤ワイン用品種はほぼ例年通りでした。
サンルイスオビスポ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:34,685エーカー
主力品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、ピノ・ノワール
サンルオビスポの醸造家たちは6月半ばに一度熱波がきただけの冷涼な生育期だった今年を「夢のようなヴィンテージ」と報告しています。冬期に雨が少なかったため灌漑の開始は早まりましたが、夏が涼しかったために蒸発散量が抑制され、灌漑は少なくて済みました。9月と10月にも熱波がなく比較的涼しい天候が続き、最適な熟度でブドウを収穫するタイミングをじっくり計ることができました。生育期が涼しかったことで2021年は記憶にある限り収穫が最も遅いヴィンテージのひとつとなりました。収量は平均的かやや多い程度で、ハングタイムを長く取れたことで風味が凝縮し、特にピノ・ノワールは例年よりも酸を高く保つことができ、素晴らしい品質となりました。
サンタバーバラ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:15,452エーカー
主力品種:ピノ・ノワール、シャルドネ、シラー
サンタバーバラ・カウンティでは、あらゆる要素が2021は最高のヴィンテージであることを示しています。生育期が穏やかで、ゆったりと安定し、萌芽から収穫まで天候も一貫して穏やかでした。春の風雨もほとんどなく、全ての品種で結実は順調でした。熱波や極端な天候も見られず霜害もありませんでした。9月中旬の一時期は急激に雨が降り、霧も発生したために一部のシャルドネで灰色カビ病が見られたものの、畑での適切な管理と慎重な収穫によって大きな問題となることなく乗り切ることができました。ブドウはゆっくりと成熟し、例年に比べて果粒が小さく房もやや軽く、収量は減少しましたが、素晴らしい風味と酸を兼ね備え、赤ワイン用品種は美しく深く色づきました。収穫は過去の平均より1週間ほど遅く8月中旬から始まりました。ただ、品種やAVAによる成熟パターンが通常と異なり、サンタ・リタ・ヒルズのピノ・ノワールは2週間以上遅かった一方でハッピー・キャニオンのボルドー品種は早く成熟しました。このため収穫期が重なり、多くの品種が同時期に樹上で収穫を待たなくてはなりませんでした。収穫期最大の課題は輸送用トラックと運転手の不足でした。一部の地域ではピノ・ノワールの収量に劇的な減少が見られたものの、サンタ・リタ・ヒルズでは平均を上回りました。
2021年のスターはシャルドネとソーヴィニヨン・ブランで、どちらも品質、量ともに申し分ありません。現時点で赤ワイン用品種、特にピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨンに高い期待が寄せられています。
サンタ・クルーズ・マウンテンズ
ワイン用ブドウ総栽培面積:1,526エーカー
主力品種:ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ
サンタ・クルーズ・マウンテンズのワインメーカーたちは2021年が卓越したヴィンテージとなることを期待しています。この産地の沿岸部では開花期の熱波で結実が不均一となりましたが、ブドウの色づき後は成熟期を通じ穏やかで安定した天候が続きました。そのため糖度が20ブリックスを超えてからのハングタイムが長く、糖度
が高くなりすぎることなく風味を発達させる最適な条件となりました。東部では生育期の天候は非常に安定しており、カビ病のリスクもありませんでした。また熱波も見られましたが長くは続きませんでした。収穫は沿岸部では遅く、東部では早く始まりました。収量は沿岸部では通常程度、東部では15%から40%の低下が見られました。サンタ・クルーズ・マウンテンズの東部、沿岸部ともに品質はすこぶる良く、沿岸部のブドウはアルコールが低く、素晴らしいフェノリックも持ち合わせています。対照的に東部のブドウは非常に力強くパワフルですが、カベルネ・ソーヴィニヨンの一部は熱波の影響に苦しみました。
ソノマ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:58,873エーカー
主力品種:シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン
ソノマ・カウンティの生育期は全体を通じて素晴らしく、低い気温からスタートして徐々に暖かくなり、最後はスピーディに完熟まで駆け抜けました。2021年は長く続く熱波はなかったものの、ソノマの温暖な地域のブドウは収量が低かったことで例年よりも若干成熟が早まりました。冷涼な地域の成熟スピードはほぼ通常通りでした。今年の収穫は若干早く始まり、急速に進みました。干ばつの影響で収量は減少しましたが果実の風味はとても強くなりました。2021年は山火事や煙害の問題がなかったため、ピノ・ノワール、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨンの収量は2020年に比べて増加しました。醸造家たちは、どの主要品種も強い風味と凝縮感のある卓越した品質だと報告しています。
テメキュラ
ワイン用ブドウ総栽培面積:2,500エーカー
主力品種:ベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、プティ・シラー
ブドウ栽培家たちは品種によらず今年の出来は非常に良いと報告しています。春がやや涼しかったため萌芽は例年より遅れました。その後暑い夏が訪れたものの、気温が華氏で3桁となる期間は長くはありませんでした。生育期は心地よく長く、ブドウのハングタイムも十分に取ることができました。収穫開始については、白ワイン用品種は例年通りでしたが、赤ワイン用品種は1週間から3週間ほど遅れました。多くのブドウ栽培家にとって今年最大の課題は赤ワイン用品種の完熟を根気強く待つことでした。今年はパンデミックの影響で労働者不足に拍車がかかり、各ワイナリーで収穫や日々の作業を担う人員の確保に苦労しました。しかし、収穫されたブドウの組成は素晴らしく、通常よりもpHが低く、全体の酸も良好で、糖度も適切な範囲に収まりました。品種によらず果実は出色の出来で、特にジンファンデルの色と香りはこの上なく美しいものとなりました。収量もここ数年に比較すると上々です。ワインにはどれもしっかりと品種特性が反映され、色も文句の付け所がなく、ワインメーカーたちは今後その味わいがどう発達していくのかを楽しみにしています。