カリフォルニアワインの多様性を訴求するために、CWIでは2020年度より特定の産地に焦点(リージョナル・フォーカス)を当てた「テーマ産地」を掲げています。2020年「ナパ・ヴァレー」、2021年「ソノマ・カウンティ」、2022年「ローダイ」、そして2023年「ウエスト・ソノマ・コースト」に続く、今年度のテーマ産地は「パソ・ロブレス」です。
パソ·ロブレスは、1983年にAVA(アメリカ政府公認葡萄栽培地域)として認定されました。当時のワイナリー数が17、栽培面積が約2,025ヘクタールであったものが、今では250以上のワイナリー、17,000ヘクタール近くにまで成長しました。カリフォルニアの2つの主要都市の中間に位置するパソ・ロブレスAVAには11のネステッドAVAが存在し、60以上のブドウ品種が栽培されています。
ブドウの多くはカベルネ·ソーヴィニョンですが、この地域のローヌ品種に注目が集まっており、また近年ではパス・ロブレスの地中海性気候やカルシウムが豊富な土壌タイプに適したイタリア品種やスペイン品種の植樹が進んでいます。
パソ・ロブレスは、西にサンタ・ルシア山脈(Santa Lucia Range)、東にラ・パンザ山脈(La Panza Range)という2つの山脈に囲まれており、これらの山脈は、カリフォルニアのセントラル・ヴァレーからの熱を東側、また太平洋からの冷却効果を西側に保つことによる気温の調整に役立っています。このため昼は暖かく夜は涼しい地中海性気候で、ブドウの生育期は長く、3月下旬から11月上旬まで続きます。
夏には暖かい空気が上昇し、太平洋からの冷たい空気を取り込む真空効果が生まれます。これらの風は、標高の低い「テンプルトン・ギャップ」を通ってサンタ・ルシア山脈を通り抜けます。これは「テンプルトン・ギャップ効果」と呼ばれ、パソ・ロブレスの劇的な日中の温度変化の助けとなっています。夜間の涼しさは、ブドウの木と房に昼間の暖かさからしばしの休息を与え、酸の保持と果皮のタンニンの発達に必要な条件を提供します。
パソ・ロブレスは太平洋構造プレートの上に位置し、東の山脈には北米構造プレートも存在します。この地域全体が中新世後期に隆起した古代の海底の上にあり、数百万年もの長い年月をかけて海の生物のカルシウムを豊富に含む骨や貝殻が圧縮され、パソ・ロブレスの石灰質土壌を作り出しました。
この土地には30種類の土壌があり、石灰質は様々な組み合わせで見られます。標高の高い地域では頁岩や石灰岩が表面にあり、なだらかな丘陵地やサバンナでは地表よりさらに下に、粒状に分解された形で見ることができます。カルシウムが潤沢なこれらの土壌は、ブドウの房が自然な酸味を保つのに役立ち、ワインにフレッシュさを与えて、豊富なタンニンと風味豊かな果実味のバランスを与えています。
ワイン産地としてのパソ・ロブレスの歴史は、この地を開拓し、有機農法でブドウの木を栽培していた人々から始まり、それらの木の多くは今も現存しています。サーティファイド・イン・サステイナビリティ(CIP)は、2008年にパソ・ロブレスで始まったヴィンヤード・チームによるサステイナビリティ・イン・プラクティス(SIP)から始まりました。
カストロ・セラーズ(Castoro Cellars)、ジェイダ・ヴィンヤード(Jada Vineyard)、ハルター・ランチ・ヴィンヤード(Halter Ranch Vineyard)などの生産者により多くのブドウ畑が有機認証を受けています。その先にあるステップとして、「リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド」認証(ROC)があり、パソ・ロブレスではタブラス・クリーク・ヴィンヤードが最初に認証を取得。他にもロバート・ホール・ワイナリー、ザ・マハ・エステート、ブッカー・ヴィンヤードなどのワイナリーが認証を取得しています。
パソ・ロブレスのワイン産地では、次世代のためのサステイナビリティが非常に重要であり、毎年多くのブドウ園がサステイナビリティとオーガニックの認証取得を目指しています。